繋いだ手、結んだ指先で。


「理真も私も、結衣ちゃんがいてくれて良かったって思ってるよ」


優しい手つきで髪を撫でられたあと、亜希さんに促されて車を降りた。


敷地も庭も、とにかく広いの一言に尽きる。

外観から想像できるように家の中も天井は高いし奥行はあるし、廊下に面したドアもたくさんある。

目を白黒させながら、亜希さんについて行く。


2階に上がる階段があるけれど、上には行かずに1階の奥の部屋に案内された。


「玄関に近いドアがリビングだから、そこにいるね。行ってらっしゃい」
「一緒に入ってくれませんか……?」
「ううん、やめとく」


いきなり部屋に入るのは気が引けて、せめて亜希さんと一緒にと思うのに、にっこりと笑顔で断られた。

亜希さんはそそくさと廊下を戻っていって、ぽつんと取り残される。

北条くんの部屋、といってもそれがわかるような目印もなく、中からは物音ひとつ聞こえない。


ドアにそっと手を当てて、数秒。

同じ数秒がこの部屋の中でも過ぎていること、ここに来た理由を思い出して、深呼吸をする。

ドアをノックすると、小さな返事が聞こえた。

一週間ぶりの北条くんの声。

今まで会っていた間隔と変わらないのに、もう随分と長くその声を聞いていなかったように思えて、ぱちっと自分の頬を軽く叩いてからドアを開ける。

< 52 / 106 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop