繋いだ手、結んだ指先で。
部屋のドアを開けて、一番に目についたのは、壁一面の窓。
日の光が部屋を明るくて照らして、サンキャッチャーに反射してきらきらと瞬く光が床に落ちていた。
程よく空調の効いた部屋の端に、大きなベッドが置いてある。
そこに腰かけて、窓の方を向いていた北条くんは、振り向いてわたしを見つけると大きく目を見開く。
「……どうして」
呆然と呟いたのも束の間、北条くんはつとに立ち上がって壁際に置かれた机にばさっとシーツをかけた。
シーツの下で何かが倒れて落ちるような音が聞こえる。
「あ、な、何も見てないから、他に何かあったら焦らずに隠していいよ……」
何もない壁の方を向いて、そう声をかける。
突然部屋を訪ねたから、見られたくないもののひとつやふたつあるだろう。
「もう、大丈夫だよ」
他に何かを隠したり退かしたりする気配はなく、北条くんの返事を聞いて彼の方を向く。
北条くんはベッドの脇に立っていて、まだ少し当惑した様子で目を泳がせる。
「そこの、ソファに座っていいよ」
「うん、ありがとう」
ぎこちない会話。
窓から差す日がギリギリ届かない位置に置かれたソファに座ると、北条くんは横には座らずに、別の椅子を持ってきた。
いい部屋だね、とか。
体調はどう? とか。
突然訪ねたことへのお詫びだとか。
そういう言葉は、何も出てこない。
心地の良い部屋なのに、空気が重かった。