繋いだ手、結んだ指先で。
◇
7月。
金曜日の放課後の時間が戻ってきて早々に、いつもと違うことが起きていた。
図書室で借りてきた植物の本を広げ、季節の花の欄を北条くんとふたりで覗き込んでいたときのこと。
「理真ー」
ノックもなくドアが開いて、Tシャツにハーフパンツ姿の男の子が入ってくる。
正確には、入ってこようとして、止まった。
北条くんを見て、わたしを見て、また北条くんを見て、一歩下がったかと思うとドアを閉めてしまう。
「待て、京汰」
すぐに北条くんが立ち上がって、閉められたドアを開ける。
京汰と呼ばれたその人は、まだドアの向こうにいたようで、ふたりの話す声が聞こえた。
「部活は?」
「3年の学年集会がまだ終わってなくて、体育館も使えないから20分後まで自由になった」
「それなら、向こうの部屋に入って来たらいいのに」
「いや、今一緒にいただろ。邪魔しねえよ」
何となく、わたしのことを言っているのがわかって、ふたりの話している間に顔を覗かせる。
「いても大丈夫だよ。遠藤くん、だよね」
突然わたしが出てきたことに驚いた様子の男の子は、よく見たら顔に見覚えがあるし、北条くんが呼んでいた名前からして遠藤くんに違いない。
遠藤くんは、きょろきょろと視線を泳がせてから、首を横に振った。
「俺は今じゃなくても会えるから、いい。じゃあな、理真」
早口にまくし立てて、遠藤くんはさっと出ていってしまう。
北条くんは後を追ったりはせずに、ドアを閉めて戻ってきた。