繋いだ手、結んだ指先で。
「あいつ、突然来るんだよ。ごめんな」
「でも、今までは全然会わなかったよね」
「部活前に一瞬顔出してすぐ出ていくから。毎回ではないし、来てたときは三瀬さんが来る前にはいなくなってたよ」
保健室と生徒玄関は近いし、下校する生徒で混み合う時間と少しだけずらして訪ねていたから、今まで顔を合わせることはなかったらしい。
気を遣わせてしまったかなとは思いつつ、今じゃなくても会えるって言葉が引っかかる。
羨ましいなって。
顔に出すと北条くんはすぐに気付くから、また植物の話に戻そうとしたとき、北条くんのスマホの通知音が鳴る。
確認していいよ、と目伏せすると、北条くんはスマホを手に取った。
「あと15分で着くって」
「今日も亜希さん?」
「うん。迎えはほとんど姉ちゃんなんだ。俊兄は送ってくれて、この後は大学で授業があるから」
以前、北条くんは何時からここにいるのかを聞いたことがある。
14時前後に来ていると言っていたけれど、送ってもらうのは名前だけは聞いたことのあるお兄さんだったんだ。
「大学生ってどんなだろう」
ふと気になった疑問を口にして、はっとする。
北条くんの前では、来年の話とか、高校や将来の話はしないようにしていたのに。
ちらっと北条くんを見ると、さして気にしていない様子で話してくれる。
「僕もあまり詳しくはないけど、俊兄は午後イチの授業がないんだって。空きコマ、ってやつらしい。でもそのあとに別の授業があるから帰れないって言ってた。逆に姉ちゃんは午後イチの授業が終わったらその後は何もないから、迎えを頼めるんだよ」
「曜日で違うんだよね、きっと。でもそっか。お兄さんがお迎えに来ることはないんだね」
「会ってみたい? そうだな、迎えは難しいかも。俊兄は優しいけど、姉ちゃんみたいにお喋りじゃないし、そっくりすぎて僕がそのまま大きくなったみたいってよく言われるから、想像してみたらいいよ」
そう言われて、目を閉じて想像してみる。
北条くんの背が伸びて、顔立ちはきりっと端正に、髪の毛は……とまで考えていると、横から「髪は僕より短い」って、頭の中を読んだようなタイミングで付け加えてくれる。