繋いだ手、結んだ指先で。


その顔を見て、何も察せないほど、わたしは北条くんを知らないわけじゃない。


わたしが話題を避けているということもあるけれど、北条くんはふたりきりの時間の中で余命のことを口にはしなかった。

北条くんが思い悩んでいることがあるのなら聞きたいと思う。

でもそうではないのなら、こう生きると決めた北条くんがいるのなら、わたしはそれを無理に聞き出す気はなかった。

わたし自身がまだ、それを受け止める準備も覚悟もない。


今がそのときなのではないかと身構えていると、北条くんはわたしの目を見つめたまま、言う。


「僕、8月の間は入院するんだ。薬を使った治療はもうしないって言ったけど、最後に、一度だけ」
「え……」
「やっぱり、少しでも可能性があるならって」


病気そのものよりも、薬の副作用による痛みや体調不良で負担が大きく、薬の効果も得られなくなって、去年の夏に治療を止めたと北条くんは続けて話してくれた。


「薬物耐性って、知ってる? 飲み続けると耐性ができて薬が効かなくなるんだ。別の薬も試したけど、どうしても、合わなかった。待てば効果は出たのかもしれない。でも以前よりもずっと、辛くて、僕はそれを止めたけど……」


わたしの知らない、北条くんの痛み。

話すことがひどく辛そうで、もういいよって遮りたくなるのをぎゅっと堪える。


「今ならもう一度、頑張りたいって思える」


北条くんの目は、迷っている目ではなくて。

もう、決めたんだって、決意をした目だった。


きっとわたしの想像では及ばないほど、薬の副作用というのは辛くきついものなのだと思う。

そして病院という場所に、わたしは立ち入ることができない。


頑張って、とは言いたくなかった。

たとえ北条くん本人がその意思を示しているとしても。

小学生の頃の寄せ書きのありふれた言葉たちを思い出して、もっと別の、わたしにしかない言葉をかけたいのに、焦れば焦るほど、何も出てこない。

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