繋いだ手、結んだ指先で。


慌ただしく帰ってきたわたしにお母さんは目を真ん丸くしていて、バタバタと荷物を置いて着替えてとしていると、何か察したようににやっと笑う。


「結衣、もしかしてデート? お祭りに行くの?」
「この前そう言った! あ、いや、デートじゃないけど、お祭りに行ってくる!」


今日お祭りに行くことは事前に伝えていた。

友だちと行く、と言ってあったのに、デートだなんて言い出すから、つい否定する声が大きくなってしまう。


「いいねえ、デート。20時には帰ってくるのよ」
「だから、デートじゃないって……」


もうすっかりデートの認識でいるお母さんのことは相手にせずに、洗面台の前で髪を結い上げる。

いつもは簡単に高く結ってある髪を、少しだけアレンジ。

北条くんとこの日に出かけることが決まってから、少しずつ練習してきた甲斐があって、綺麗に編み込みにできた。

薄付きのリップを唇にのせて、つけすぎかな? と拭ったり、つけ直したりを繰り返していると唇自体が赤く色付いてリップの色なのかわからなくなる。

小さなバッグに最低限の荷物をまとめて、時間を確認すると17時まであと20分しかない。

急いで走って髪型が崩れるのだけは避けたくて、最後に一度全身のチェックをしてから家を出た。

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