繋いだ手、結んだ指先で。
約束の5分前に図書館に着き、辺りを見渡す。
ここを待ち合わせ場所としている人は他にもいるけれど、北条くんの姿は見えない。
噴水の近くで涼みながら、手鏡で髪の毛が崩れていないかを確認する。
緊張と、少し急いだせいでバクバクと忙しない心臓を落ち着けようと深呼吸をしていたとき。
「三瀬さん!」
正面の駐車場から北条くんが小走りでやってくる。
いつか、花を見に湖畔の公園に行ったときと同じような、シンプルな服装。
シャツのワンポイントが以前と同じで、好きなのかな? と気になりながらふと、思う。
あのときは、特別意識していなかったけれど、あれもデートになるのかな。
友だちとのお出かけと伝えたのに、お母さんが勝手にデートと呼んでいたせいで、わたしも変に意識してしまう。
「お待たせ。三瀬さん、髪型がいつもと違う。こっちはふわってなっていて……かわいい、すごく」
近くに来た北条くんは、じいっとわたしを見て言うから。
余計に、ドキドキして、止まらない。
顔が真っ赤になっているのがわかって、返事もできずにいると、北条くんの後ろから背の高い男の人が現れて、北条くんの隣に並ぶ。
目が合うと、ぺこっと会釈をされて、慌てて礼を返す。
「こんにちは。初めまして、北条俊です」
「えっ、あっ……初めまして。三瀬結衣です。北条く……理真くんとは、同じクラスで、友だちで。そう、友だち……」
お兄さん、俊さんも北条さんだからと、北条くんのことを慣れない名前で呼ぶとまたかっと顔が熱くなる。
友だち、ということを誇張するように繰り返すと、わたしがどうして焦ってるのかわからないようで、俊さんは首を傾げた。
「いつも、弟が世話になってるって亜希からも聞いてる。今日は理真のことをよろしくお願いします。先に聞いてると思うけど、何かあったらすぐに連絡していいから、楽しんで」
俊さんはそう言うと、被っていたキャップを取り、深く頭を下げた。
北条くんのことを、くれぐれもとお願いされたというよりは、本当に心から楽しんでほしいと、そう伝えられた気がして、わたしもしっかりと頷いた。