繋いだ手、結んだ指先で。
北条くんに掴まれた手の拘束は緩くて、慌てた拍子に力を入れると簡単に解けた。
人の流れに任せてすぐに去ってくれると思ったのに、声をかけたその人は立ち止まってもう一度わたしの名前を呼ぶ。
「三瀬も祭り来てたんだな!」
「う、うん。佐原くんたちも?」
「そう、部活早く終わったからさ。他の部も今日は早めに切り上げてるよ。ていうか、一緒にいるの誰?」
北条くんは佐原くんたちに背中を向けているから、顔は見られていない。
わたしと一緒にいる人、に対して佐原くんや一緒にいる吉松くんの目が好奇心を滲ませているのは、山岸さんとのやり取りで噂になったことがあるからだ。
ここで変な風に避けてしまったら、また妙な噂を立てられてしまうかもしれない。
「ん? 見たことないやつだな。他校の人?」
どうにかしないと、と思う間にも、佐原くんは北条くんの肩越しに顔を覗き込む。
北条くんは戸惑いも驚きもせず、すっと佐原くんの視線から逃れるように顔を背ける。
「そういや、前に一緒にいたってやつも他校の生徒って言ってたっけ」
「佐原くん、あの……」
「でもさ、祭りに一緒に来るくらいだから、やっぱり付き合ってんじゃねえの?」
佐原くんは純粋な興味があって言っていて、もしかしたらわたしをからかう意図もあるのかもしれないけれど、少なくとも馬鹿にしたような言い方じゃない。
最後に言ったことは疑問形だったから、すぐに首を横に振ろうとするのに、北条くんが真っ直ぐにわたしの目を見つめていて。
逸らせなくて、付き合っていないと、すぐに否定できなくて。