繋いだ手、結んだ指先で。
そうしている間に、佐原くんの後ろにいた吉松くんが北条くんの顔を見に来た。
隣に回り込み、北条くんの顔を覗き込んで、目を丸くする。
「え、北条? 北条だろ」
驚いたように声を上げて、北条くんの肩をぱしぱしと叩く吉松くんは、わたしたちのクラスメイトであり、佐原くんとは違い小学校も同じだった。
何度か同じクラスになったこともあるから、北条くんの顔がわかったのだろう。
「久しぶりじゃん。元気にしてたのかよ。全然学校来ねえし、ずっと入院してるもんと思ってたよ」
「えっ、こいつ北条なの? なんだよ、他校生じゃねえんだな。もしかして、三瀬は知らなかったのか?」
「いや、知らないわけないだろ。三瀬は小学校一緒だし、こいつら確かずっと同じクラスだぞ」
「えっえっ、じゃあなに、どういうこと!?」
勝手に騒ぎ立てられて、わたしと北条くんは何も言えずにいた。
北条くんは、言えないというよりも話す気がないようで、しつこく聞かれても無視を決め込んでいる。
「なあ、北条。お前なんだよ、三瀬とは会ってたんだ? 祭りとかさ、来れるなら学校にも来いよ」
「……そうだな」
「お、やっと返事した。なあ、スマホ持ってねえの? 連絡先交換しようぜ」
北条くんの肩に手を回して、北条くんの気持ちなんて無視するみたいに話しかける様子に、奥歯を噛み締める。
北条くんの顔を見ていたら、わかる。
あからさまに顔に出したりしないけれど、今すごく、辛そうだって。
「佐原くん、吉松くん。ごめんなさい。わたしたち、もう行かなきゃいけなくて」
クラスメイトに見つかってしまった。
北条くんが、北条くんだってバレてしまった。
その事実が胸に重くのしかかりながら、でも、ここで黙っていてはいけないと思う。
「え? いいじゃん、少しくらい……」
「わ、わたしが! 北条くんと、いたいから……今は、やめてほしい」
吉松くんが言うのを遮って、勇んだわりに声は情けなく震えて、でもちゃんと、自分の意思を伝える。
ぎゅっと唇を噛み締めると、佐原くんも吉松くんもきょとんと目を瞬く。