繋いだ手、結んだ指先で。
木陰の空いているベンチに座って、ビニール袋を置く。
焼きそばは冷めてしまうし、かき氷も溶けてしまう。
それなのに、食べなきゃね、と言い出せる空気ではなかった。
北条くんはここに来るまでも黙っていて、今はキャップを脱いで額の汗を拭いながら、川面を見つめている。
「北条くん、あのね」
名前を呼ぶと、こっちを向いてくれた。
でもその目に射竦められると、言葉がでなくなって。
それを予想していたように、先に北条くんが口を開く。
「もしかして、前に湖畔の公園に行ったとき、誰かに見られてた?」
「……うん」
「他校の人って言ったの?」
責めるような口調ではないのに、ゆっくりと、足元から深い沼に沈むような、低く冷たい声。
「ごめんなさい」
「謝らなくていいよ。僕のこと、話さない方がいいって思った理由があるんだろうし」
本心が伝わらないもどかしさと、北条くんのためじゃないって怒りたくなる気持ちと、また嘘をついてしまっていた罪悪感で押しつぶされそうになる。
「三瀬さん、そんな顔しなくていいよ。僕、怒ってないよ。金曜日にしようって言ったのも、クラスメイトと会わないようにって考えてくれたんじゃないの?」
「そう、だけど……わたし、北条くんに黙ってたことには変わりないから」
「……三瀬さんは、優しすぎるよ」
寂しそうに笑って、北条くんはかき氷をひとつ、わたしに渡してくれた。
いちご味のかき氷は、半分食べ進める頃には溶けてしまっていた。