繋いだ手、結んだ指先で。
叶うといいと思っていた。
でも、本当に叶うと信じてはいなかった。
きっととても難しいことだとわかっていたから。
北条くんは驚いた顔で声も発しなくて、ただじっと息をしていた。
椅子ごと振り向いて、北条くんの机越しに向き合う。
空っぽだった席に、北条くんがいる。
教室の、わたしの日常に、北条くんがいる。
「……ありがとう、三瀬さん」
ようやく口を開いた北条くんは、わたしを真っ直ぐに見つめてそう言ってくれた。
薄い唇が弧を描いて、わたしの好きな柔らかい笑みを浮かべる。
「ここに来られてよかった」
わたしに向けて言ったのかはわからなかったけれど、北条くんは小さく呟くと、手を伸ばして窓を開け、目を伏せた。
夏の終わりを感じさせる風が舞い込んで、北条くんとわたしの髪の毛を揺らす。
心地のよい風を受けながら、わたしも目を瞑る。
「8回、同じクラスになったんだね」
ふと、4月に保健室で会ったとき、北条くんだと気付いて一番に言ったことが『また同じクラスなんだよ』だったことを思い出した。
あのときは、8回目だって数えてることを北条くんに隠したけれど、今ならと思って伝える。
ずっと一緒だったんだよ、と続けて、目を開けると北条くんも薄らと目を開いていた。
「知ってるよ」
確か、あのときも北条くんは同じ返事をした。
ほんの些細な、小さなことも取りこぼさずに、ちゃんと全部覚えてる。