繋いだ手、結んだ指先で。
「北条くんとわたし、名字の頭文字が近いから、毎年クラス表を確認すると自分の名前のあとにすぐに北条くんを見つけるの」
北条くんの名前を見つけたら、ほっと安心するような、嬉しい気持ちになる。
ずっと同じクラスが続いたから、今更離れるのは寂しくて、学年が変わる前はそれが理由でそわそわと落ち着かなかった。
こんなことを本人に話せるときが来るなんて、4月のわたしは想像もしていなかったと思う。
自分の話したいことだけを話して、北条くんは疲れていないかなと顔色を窺う。
北条くんはわたしを見つめているけれど、黒目が左右に行き来して、少しだけ居心地が悪そうにも見える。
「北条くん? 何か、気になることがあった?」
わたしも以前より、北条くんの変化には気付けるようになった。
何か言いたそうだなってことくらい、わかる。
わたしが聞くと、北条くんは視線を下向けていたけれど、やがて観念したように口を開く。
「僕なんだ。同じクラスになるようにしてたの」
「え……えっ!?」
「決めるのは学校の先生だから、絶対にそうなるとは言えないけど……一緒のクラスになるように、両親にも頼んで先生にお願いしてた」
全く予想していなかった告白に、開いた口が塞がらない。
クラス替えに配慮があることは知っていたけれど、北条くんがそれを希望しているとは知らなかったし、本当に叶うものなのかも半信半疑で、運だと思っていた。
「それって、いつから……?」
「小学3年生までは本当に偶然だったよ。4年生になる前に、先生がたまたま希望を聞いてくれて、それ以来は毎年お願いしてた」
「中学に上がるときはどうしたの?」
「6年のときの担任の先生が伝えてくれた。入学前にそういう情報交換もあるらしいよ」
聞けば教えてくれると何度も言っていた北条くんは、こんなときでも淡々と答えてくれる。
わたしは頭の中がぐるぐるして、考えごともまともにできなくなる。