繋いだ手、結んだ指先で。
4つ重なったうちの、一番上に置いたわたしの左手を持ち上げて、北条くんの頬にぺたりと添える。
親指の腹で北条くんの目元の涙を弾いた。
されるがままの北条くんの、止まない涙を拭い続ける。
涙の膜が張った瞳は、きらきらと輝く。
その目が、あんまり綺麗で、またひとつ好きが込み上げて。
押さえきれない想いを、今一度口にしようとしたとき。
「僕も、結衣ちゃんのことが好きです」
大好きな笑顔とともに、北条くんが伝えてくれた。
北条くんの両手に挟まれたわたしの右手を、痛いくらいに握りしめて。
わたしの勝手な想像で、北条くんは告白はしないと思っていた。
わたしに向ける視線や、繋いだ手、一緒に過ごすときに目にする表情の全てから、北条くんも同じ気持ちだってことはわかっていた。
でもそれを、決して口にすることはないだろうなって。
求めていたわけじゃない。
北条くんがそうすると決めたのならそれでよかったし、わたしの気持ちも変わらなかった。
それでも、やっぱり、好きな人の声で、欲しかった言葉をもらえたことが、これ以上ないほど嬉しい。
「本当は、結衣ちゃんの気持ちを聞いたときに伝えたかった。でも僕は、遠くない日に、いなくなる人だから。伝えない方がいいって思って、勝手に決めてた」
「理真くんならそうするんじゃないかなって、わたしも思ってたよ」
「全部、バレてるな……それから、これも僕のわがまま。結衣ちゃんのことはとても好きだけど、付き合うとかは、しないでいよう。僕は、僕の身体が動かなくなったときに、手を離すことができないと思うから」
迷いのない口調で言い切った北条くんに、頷く。
ここでわたしが、それでも付き合ってほしいと口にしたら、北条くんはきっと困るだろう。
断固として譲らないかもしれないし、付き合ったとしても北条くんはきっと色んなことを気にして辛くなってしまう。
わたしにとっても、それは本意ではないから。
想いを伝えることが許されないわけではないのなら、わたしは、わたしたちはこのままで構わない。
さっきは先を越されてしまったから、今度こそ自分の気持ちを告げる。
北条くんは心底嬉しそうに笑って、繋いだ手をぎゅっと、握りしめた。