繋いだ手、結んだ指先で。
手のひらいっぱいに
◇
北条くんと気持ちを伝え合ってから1ヶ月。
何度か金曜日に学校で会っていたけれど、先週亜希さんから連絡があり、このところ体調が良くないらしい。
この間の金曜日は会えず、明日こそはと楽しみにしていた木曜日の夜、亜希さんから電話がかかってきた。
ベッドでごろごろしていた体を起こして、居住まいを正してから電話に出る。
『結衣ちゃん、こんばんは。今話しても平気?』
「こんばんは。お話、大丈夫です」
今日はバイトではないのか、亜希さんの周りは静かだった。
『理真のことなんだけど……明日も学校に行くのは難しそう。それでね』
「そうですか……」
亜希さんが何か言いかけていたのに、学校に来るか来ないかという一番気になっていたことを聞けて、遮るようになってしまう。
慌てて、それでどうしたんですか? と尋ねる。
『来週の土曜日か日曜日、理真の体調次第でどちらかはっきりしないんだけど、空いていたら一緒に出かけない?』
「来週……はい、どちらも空いてます。り……北条くんと一緒にってことですよね」
『そう。私も一緒に行くけど、2人きりにはするから、デートだと思っていいからね』
「デッ……」
言葉に詰まって、動揺したことが伝わったのか、電話の向こうの亜希さんが笑う。
『デートって伝えてって言ったのは理真だから! それじゃあ、また近くなったら連絡するね』
「あ……その、前の日の金曜日も、難しいですか?」
『学校には理真も行きたがってはいるけど、今の状態では連れていかないって、俊がきつく言っていてね。わたしも、同じようにすると思う。だから、学校に行くのは難しいかな』
北条くん本人との連絡手段がないから、今どんな状態なのかはわからない。
でも、一番近くにいる家族が止めるということは、決して良くはないのだろう。
残りの時間を意識してしまい、返事をする声も小さく沈んだものになる。
亜希さんは多分、そのことに気付いていたけれど、それ以上は何も言わずに電話を切った。