繋いだ手、結んだ指先で。
翌週に亜希さんから、土曜日に出かけられそうだから迎えに行くと連絡があった。
金曜日に学校に行くのは、今週だけではなくこの先も難しいと言っていた。
亜希さんから話を聞くだけでも、どうしようもなく不安になって、心細くて、泣いてしまいそうになるのに、わたしは北条くんと顔を合わせて平気なのかな。
季節はすっかり秋めいて、肌寒さを感じる。
誕生日でもなんでもないけれど、北条くんのためになる何かを準備しようとして、でも結局何も用意できないまま、土曜日当日を迎えた。
背伸びをしない程度に着飾って、家まで迎えに来てくれた亜希さんの車の後部座席に乗り込む。
同じ後部座席の奥に座っていた北条くんは、わたしが声をかけるまで目を閉じていた。
青白い顔はとても体調が良いとは言えない様相で、思わず息を飲んでしまうと、北条くんは安心させるように微笑んだ。
「久しぶり、結衣ちゃん」
「……北条くん」
「理真って呼ばないの?」
きょとん、と瞬きをして、何でもないことのように言うから、慌てて運転席の亜希さんを見る。
「あ、いいよ。私のことは気にしなくて。家で理真が結衣ちゃんって呼んでたから、てっきりそういうことだと思ってたし」
「そういうことって」
「付き合ったんじゃないの?」
信号待ちでバックミラー越しに目が合ったときに聞かれて、首を横に振る。
不思議そうな顔をしながら、ああそうと亜希さんは軽く流して、再び走り始めた車の中で北条くんをじとっと見つめる。
亜希さんに何を、どこまでを話しているんだと問い詰める視線のつもりだったのに、ずっとにこにこと笑っている北条くんに絆されて、考えることをやめた。