繋いだ手、結んだ指先で。


車の窓から見える景色で、行き先は何となく気付いていた。

北条くんと一度来たことのある、湖畔の公園。

亜希さんはわたしと北条くんを公園の入口に降ろすと、車を停めてくると言って駐車場に向かった。

わたしはこの場で待つつもりだったけれど、北条くんは構わずに歩き始める。


「えっ、亜希さんは?」
「いなかったら後で探しに来るよ」
「いや、わざわざ探させなくてもいいと思うんだけど……」
「デートなんだから。いいだろ、ふたりで」


数歩先で振り向いた北条くんは手を差し出しながら言う。

デートとはっきり言われると、どう反応したらいいのかわからなくて、おずおずと手を重ねる。

また少し、肉付きの薄くなった手を握り、その力はまだ衰えていないことにほっとしながら、隣に並んで歩く。


「今はコスモスが多いんだね」
「この辺りは夏にひまわりが咲くから。ひまわりの時期が終わってから種をまいても秋には咲くコスモスがちょうどいいんだよ」
「他の花は違うの?」
「種をまいてから開花するまでの期間は花によって違うし、ひまわりが枯れてから種まきすると遅い花は別の場所で育てて植え替えてると思うよ」


花の話をしているときの北条くんは相変わらず生き生きとしていた。

歩くペースはわたしに合わせてくれているというよりは、あまり速く歩くときつそうで、ゆっくりと花を楽しみながら、以前休憩したベンチに向かう。

途中でペットボトルの水を買って渡すと、あのときと同じだと言って、北条くんは笑った。

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