繋いだ手、結んだ指先で。
何度目かの名前を呼んだとき、緊張してずっと握り込んでいた手に北条くんの手が重なった。
何度繋いでも、結んでも、ドキドキするのは変わらない。
触れたら繋ぐことが当然のように、指先までぴたりと重ねる。
「結衣ちゃん」
真っ直ぐに見つめられて、目が合うと北条くんは笑う。
笑う顔を見ていると、わたしがいるだけで北条くんは嬉しいんだって、わかる。
わたしもそうだから。
北条くんがいてくれるだけで、手を繋いでいられるだけで、泣きたくなるほど、しあわせで。
「結衣ちゃんには、泣かないでほしいんだ」
涙が溢れた瞬間にそう言われても、すぐに引っ込めることはできない。
わたしの涙を服の袖に吸わせながら、北条くんは心配そうに眉を下げる。
「僕がいなくなったあと、僕が理由で泣いたとき、僕はそばにいてあげられない」
泣かないからと言いきれたら、北条くんを安心させてあげられるのかな。
一瞬で見透かされる嘘を堂々と吐けるほど、わたしに余裕はないし、泣いている今説得力もなかった。
「泣かないでほしいけど、もし、泣いてしまうときは、どうか結衣ちゃんの大切な人のそばで泣いて」
「大切な人……」
「そう、結衣ちゃんのことをとても大切にしてくれる人のそばで。約束、しよう」
繋いだ手の指先を小指だけ器用に絡めて、北条くんは指切りをした。
そのまま、わたしの方に頭を倒して、肩口にぽすっと額を押し付ける。