繋いだ手、結んだ指先で。





最後に公園で会ったちょうど1ヶ月後。

ある寒い日に、北条くんは亡くなった。


北条くんから電話がかかってくることも、わたしから電話をかけることもなく、本当にあの日が最後になった。

あとから亜希さんに聞いたら、最後はほとんど苦しまず、眠るように亡くなったと言っていた。


わたしの日々は、北条くんがいなくなったからといって何も変わらなかった。

金曜日の会うことも、もうずっと前からなくなっていたし、スマホには最初から連絡先が入っていない。


クラスメイトにも北条くんが亡くなったという話を先生がしたあとで、山岸さんと笹野さんには以前公園で見たのはわたしと北条くんだったことを話した。

今更だと思ったけれど、北条くんとのことで嘘を嘘のままにしておきたくなかった。

山岸さんも笹野さんも、わたしが嘘をついていたことを責めはせずに、冬以降何となく一緒にいる時間が増えた。


朱那は北条くんとのことを知っていたし、亡くなったと聞いてしばらくはわたしの家に泊まりに来てくれていたほどだ。

北条くんに気持ちを伝えたこと、北条くんの気持ちも聞けたことを話すと、その日は夜中泣いていて、翌日ふたりとも目を腫らして登校したことも、思い出として日々を重ねていく。


春休みに入る前に一度、遠藤くんが話しかけてくることがあった。

遠藤くんも、小さい頃からの幼馴染みが亡くなって、消失感がその顔にありありと浮かんでいた。

わたしと遠藤くんがもう少し仲が良かったのなら、この悲しみも分け合えたのかなと考えたりもしたけれど、遠藤くんが伝えたかったことはそんなことではなかったらしい。


「理真の姉ちゃんに連絡しろよ」


返事に詰まったことで心当たりがあると気付いたのか、ふんと鼻を鳴らして去っていってしまう。

亜希さんから、先日電話がかかってきていた。

かかってきたときは本当に出られなかったのだけれど、何となく折り返せないまま、数日が過ぎていたときに遠藤くんにそう言われて、もしかしたらわたしの様子を見るように頼んだのかもしれない。

遠藤くんには悪いことをしたなと思いながらも、結局春休み中にも亜希さんに連絡はできなかった。

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