アルト、お小遣いを学ぶ【アルトレコード】
問題が起きたのは翌日だった。
始業後しばらくして、北斗さんがアポもなくニュータイプ研究室に駆け込んできた。
「君、メールは見た?」
「メールですか? 特に変わったものはなかったと思いますけど」
私はパソコンの画面を開く。朝一で確認した通りで、なにも新しいものはない。
「君のところには届いてないのか……」
北斗さんは青ざめ、こめかみに手を当てて考え込む。
「なにかあったんですか?」
「それが……俺と君の写真を売る、というメールが出回ってるらしい」
「は!?」
私は驚き、次いでディスプレイを見た。アルトは画面の中で水泳をしていて、こちらにかまう余裕はないようだ。
「君……なにか知ってるね?」
「知ってるっていうか……」
心当たりといえば昨日の女性研究員との会話。
「教えてほしい。なにがあってこうなってる?」
「……気分のいい話じゃないと思いますけど、いいですか?」
「かまわないよ」
北斗さんの真剣な顔に、私は話し始める。
アルトと一緒に昼食をとっているときに女性研究員と同席し、「北斗さんの写真なら売れる」と言われたことを。
北斗さんは不快そうに眉間に皺をよせ、ため息をついた。
「それで、君はアルトが写真を売ろうとしていると推測したわけか」
「そうです」
「昨日の夕方、アルトが俺の写真を撮りたいと言ってきたのもそれか……」
北斗さんが顔をしかめる。