アルト、お小遣いを学ぶ【アルトレコード】
「アルト、ちゃんと言って。怒らないから」
「……ほんとに?」
「本当に」

「君は甘いね」
 北斗さんにあきれられたが、ここで怒ってしまってはアルトが話してくれなくなってしまう。

「……お金、ほしくて」
 小さな声でアルトが言う。

「どうして欲しかったの?」
「……北斗に、プレゼントしたかったから」
 その言葉に、北斗さんが息を飲むのがわかった。

「ぼく、もらったお小遣いで本ばっかり買って、先生にはお菓子をあげたけど、ほくとの分を忘れてて……だから……」
 アルトは体を縮こまらせてぼそぼそと言い訳をする。

「……先生には買ったのか」
 北斗さんはちょっとショックを受けているようだった。なんだか罪悪感がわいてくる。あのときは優越感を感じてしまってごめんなさい。

「アルト、プレゼントしたいっていう気持ちはいいことだと思う。だけど、勝手に人の写真を売ってはいけないのよ」
 私が注意すると、アルトはさらにしゅんとしてうつむく。

「だけど、ぼくはAIで人間のように働けないから……」
「人間でも子どもは働けないの。働いちゃいけないの。勉強がお仕事だからね」

「……? お仕事はお給料がもらえるんでしょ? あ、だからお小遣い!?」
「うーん、それはちょっと違うんだけど……」
 どう説明したらいいんだろう。だけど今はそれが優先事項ではない。

「とにかく」
 北斗さんが言い、私たちは彼を見た。
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