アルト、お小遣いを学ぶ【アルトレコード】
「ほくとー!」
 アルトが声をかけると、気付いた北斗さんが手をふってこちらにやってきた。

「今日はなんの勉強を?」
「今は写真撮影をしていました。感性が養われるかな、と思いまして」

「ああ、この前言っていた……。いい写真はとれた?」
 北斗さんは端末のアルトに尋ねる。

「もちろん! ほくとも写してあげる!」
「俺はいいよ」
 北斗さんは苦笑して辞退するが、アルトはひかない。

「ダメ! ほくとの写真もとるの!」
「じゃあ一枚だけ」

「やった!」
 アルトは大喜びで北斗を花壇の前に立たせ、シャッターを切る。

「もっとポーズとって!」
「アルト、約束は一枚だよ。俺は仕事中だからね。もう行くよ」

「えー?」
「先生の写真は撮ったの? まだならたくさん撮ってあげて」
 矛先が自分に向いたので、私は驚いた。

「そうだった、まだ撮ってなかった! じゃあ先生の写真を撮るね。ほくと、ばいばい!」
 現金なアルトに苦笑し、北斗さんは立ち去った。
 残された私は思いがけない展開に怖気づく。

「先生、たくさん撮って上げるからね!」
「あはは……ありがと……」
 どうしたらいいかな、と思いながらも三脚代わりにベンチに端末を置く。結局はアルトの指示に従って、私はいろんなポーズをとらされて写真を撮られた。

 そろそろ終わりにしてもらおうと思ったときだった。
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