アルト、お小遣いを学ぶ【アルトレコード】
「でも、いつもは私の買い物にアルトがつきあってくれてただけでしょう? それに、アルトが欲しいものはいつも北斗さんに許可を貰ってからだったけど、お小遣いなら自由に使えるのよ?」
「そっか、ぼくの好きなものを好きに買えるんだ!」
 アルトの目が喜びに見開かれた。さっきそう説明したはずなんだけどな、と私は苦笑する。

「でもちゃんと考えて使ってね」
「うん!」
 アルトはうれしそうに返事をした。



 驚いたのは翌日だった。
 ピンポーン、とチャイムが鳴ったあとに、
『配達ロボットが到着しました』
 とアナウンスが流れる。

 ディスプレイの片隅に出たウィンドウに、扉の前で待つ猫型配達ロボットの様子が映った。
 私は首を傾げる。なにも買った覚えがないし、配達も頼んでいない。

「配達ミスかな」
「違うよ、ぼくが買ったのが届いたんだ」
 アルトが勉強の手を止めてそう言ったから私は驚いた。

「早速使ったのね。なにを買ったの?」
「いいから、早く受け取って!」
 アルトがワクワクした様子で言い、私は扉を開けて猫型ロボットを見る。

「顔認証、完了。アカウントと一致にゃ」
 自動音声が響き、猫型ロボットのお腹がぱかっと開く。
 と、そこには安価なチョコレート菓子がひとつ、ぽつんと載っていた。
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