アルト、お小遣いを学ぶ【アルトレコード】
 アルトがお菓子を?
 首をかしげながら取り出し、受け取り完了ボタンを押す。と、猫型ロボットは「ありがとうございますにゃ!」と答えてお腹を閉じて、滑るように去って行った。

 私は研究室に戻り、アルトにお菓子を見せる。
「アルト、これで合ってる?」
「合ってるよ。先生にプレゼント! チョコレート好きでしょ?」
 にこにこするアルトに、私は驚きと喜びで動けなくなった。

 アルトが私にプレゼントを? 初めてのおこづかいで?

 いっきにいろんな感情が沸いて、お礼を言わなきゃ、と思うのに、それ以上に胸が熱くて踊っている。全身の血が喜びに跳ねまわり、アルトを抱きしめたくてたまらない。

「先生……うれしくない?」
 アルトが不安そうに尋ねて来るから、私は大慌てで首を振った。

「逆。うれしすぎて、固まっちゃった! なんていい子なの、アルト! ありがとう!」
 私はディスプレイの中のアルトの頭を撫でまわす。

 ああ、思い出した。初めてのお給料でおいしいと評判のお菓子を両親に送ったら、ものすごく喜んでいるメッセージをくれたんだった。あのときのお父さんとお母さんもこんな気持ちだったのかな。

「ちょ、先生! 喜びすぎ!」
 言いながらもアルトもうれしそうだ。

「北斗さんにはなにをあげたの?」
「えっ」
 アルトはびっくりしたように目を丸くし、それから気まずそうに目を伏せた。

「北斗のぶん……忘れてた……」
 その告白に、私は思わず噴き出した。
< 5 / 15 >

この作品をシェア

pagetop