ひと夏の星に名前をつけるなら
「そういえばアルも星が好きなの?」

ふと疑問に思ったことを問うてみる。
星が好きと言ったのは私だけで、彼のことは詳しく聞いていないことに気がついた。

「うん、好きだよ。特にアルタイル。星について全然知らないけど、見てると安心するんだよね。真っ直ぐで、どこか寂しそうで……少し似ている気がする」

「似てる?」

「そう、どこかひとりぼっちな感じが」

────ひとりぼっち。

多分、私もそうだ。
普段そう見せないようにしてるだけで。

「あとはオリオン座。ギリシャ神話の中でも人気の星座だから、この話は覚えてる」

「オリオンって……とっても強い狩人だよね」

「そう、力持ちで自信家で。でもね、最後は毒サソリに刺されて死ぬんだ。見かねた女神ヘーラによってね」

「そうだったね」

これはとても有名な話だ。
ギリシャ神話に興味が湧いてから一番に読んだ程に。

「傲慢すぎたからって説。だからオリオンはサソリが苦手で、同じ空には見ることができない。サソリは夏でオリオンは冬」

「じゃあアルタイルとも一緒には見れないね」

「そう。2人とも自分の力を上手に使えなくて反感をかったんだ。あ、僕はアルタイルのこと彦星だと思ってるからね。夏と冬、どちらの夜空を見てもこの話を思い出すように戒め、みたいな」

遠くを見つめて彼が言う。

確か、織姫と彦星の話って2人が恋に落ちて結婚した後、仕事を怠るようになったんだっけ。

それで天の川を挟んで引き離されたとか。

小さい頃、そんな話を聞いた気がする。

それにしても、彼はそんな風に見てたんだ。

新しい考えに興味が湧く。

でも、そんなに自分を苦しめなくていいのに。
何故か私の心がチクリと痛んだ。

< 10 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop