ひと夏の星に名前をつけるなら
夏がまた、やってきた。

蝉の声も、風の匂いも、いつもと変わらない。
だけど私の心持ちは、去年とは違っていた。


───今年もこの場所に来た。

日が落ちる前の空には、もう星がいくつか瞬いていた。

草の背丈は少し高くなっていて、道の脇の花の色が去年より淡い気がした。

歩くたびに、胸が少しずつ締めつけられる。

「……いるわけ、ないか」
そう呟いた声は、風にかき消された。
胸の奥が少しだけ軋む。

分かってた。きっと、いないって。

でも、それでも少しだけと期待してしまった。

もしかしたら、って。
また、ひょっこり現れて「お隣、失礼します」って笑うかも。
そんなふうに、都合のいい奇跡を信じたくなった。


ただ、もう一度あの空が見たかっただけ。

私は、去年と同じ場所に座り、ひとりで夜を待った。

風が戦ぎ、草が静かに鳴る。

虫の声が、やけに耳に残った。
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