私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
関家君は納得していないようだったけど、私が元気よく言ったからか、笑ってうなずいてくれた。
カフェ『音の葉』を出て二人でおしゃべりをしながら歩いた。
関家君が学生服を着ているせいか、なんだか高校生の頃を思い出していた。
あの頃は練習や勉強が忙しくて、こんなふうに歩くことはなかった。
周りに上手な人がたくさんいて、ついていくのに必死だったから。

「関家君。進路は決めたの?」

「はい。医学部へ」

うん!?医学部!?

「小児科の先生になろうと思ってるんです」

「関家君。優しいから似合いそうだね」

「親が医者で大学は医学部に行けって、前々から言われていたんですけど、俺は医者になろうって思ってなかったんですよ」

「えっ?そうなの?」

「親のいいなりになりたくないっていうガキくさい反発からなんで、深い意味はないです」

反抗期というやつだろうか。
なんだか、可愛らしいなあ。

「昔から習い事ばかりさせられて、ピアノもその一つだったんです。正直、望未先生に習い直すまで、ピアノは嫌いでした」

「やらされてるって、思うと退屈だよね」

「はい。でも、俺、親が経営する病院でピアノを弾いたんです。慰問のつもりで。そしたら、すごいって聴いてた子供が笑ってくれて。それで俺、小児科の先生を目指したいって思えたんですよね」
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