私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
ショッピングビルの上階にあるパンケーキのお店に向かう。
いつもは行列ができているというお店は運良く誰も並んでなくて、すぐに店内に入れた。
窓際に案内され、席に座る。
窓からはちょうど雨がやんで、明るい日差しが地上を照らし、雲の隙間に飛行機が見えた。

「プレーンでトッピングは生クリームかな」

菜湖ちゃんがどうする?と、私にメニューを見せる。
パンケーキとドリンクセットを選び、店員さんに注文を終わらせて、また窓の外をながめた。
もう飛行機は見えなかった。

「望未ちゃん。飲み物はなににしたの?」

「さあ……」

「ぼんやりして大丈夫?最近、元気ないから、さすがにのんきなお父さんもお母さんも心配してたよ?」

「うん」

「飲み物をお持ちしました」

オレンジの香りがして、初めてそこで自分がオレンジジュースを頼んだのだと気がついた。

「望未ちゃん!?」

目の前に置かれたオレンジジュースを見て、涙がこぼれた。
梶井さんに会いたい。
どうして連絡をくれないの?
声をきかせて。
泣き出した私に驚き、菜湖ちゃんがハンカチを差し出したその時、スマホが鳴った。
< 119 / 174 >

この作品をシェア

pagetop