私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
スマホの画面に『梶井理滉』と出ていた。

「うそ……なんで……?」

慌ててスマホを手にした。

「かっ、梶井さんっ……!」

涙声で一番会いたかった人の名前を呼んだ。

『また泣いてたのか』

「泣いてない」

嘘をついた。
でも、それはすぐにバレてしまう嘘だった。

『会いたい。今すぐ来いよ』

聞き間違え!?
梶井さんがそんなこと言うなんて信じられなかった。
もしかして、スランプで落ち込んでる?

「そんなひどいスランプなの!?」

『そうだ。お前のせいだ』

「わ、私のせい?」

『俺にはお前が必要だ』

「今すぐ行くから待ってて!」

これは大変なことが起きたと思った。
電話を切ると、バッグを手に立ち上がった。

「どこいくの?望未ちゃん!?」

「ごめん。菜湖ちゃん。梶井さんを助けに行ってくる」

「梶井さん?梶井さんって、チェリストの梶井理滉!?どういうこと?」

菜湖ちゃんは私がなにを言ってるかわからないという顔で見ていたけど、私は説明なんてしているヒマはなかった。
私はただ自分の感情に突き動かされるまま、走り出していた。
梶井さんの元へと―――
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