私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
「さわやかな社長と付き合っているのは私の姉の菜湖(なこ)ちゃんです。菜湖ちゃんに片思いしてた達貴(たつき)さんが私が妹だって知って、働いているのを見にきたんですよ」

菜湖ちゃんとの共通の話題が欲しかったんだと思う。
二人は付き合い始めて、今ではラブラブカップル。
だから、食事も三人で行った。
達貴さんは優しい人で、私と梶井さんの間になにかあると知っても、菜湖ちゃんが心配するだろうと思ってなにも言わずにいてくれた。
そして、カフェに通って様子をうかがっていたのだから。
私にしたら、面倒見のいいお兄さんってかんじだよ。

「渡瀬のやつ!いや、渋木の姉もか!俺を騙したな!」

騙されたんだ……
渡瀬さんだけじゃなく、小百里さんまで。
梶井さんはやられたなと呟いていたけど、きっと二人とも梶井さんを心配してのことだと思う。

「私に彼氏ができたって思って、すごく焦った?」

悔しそうな顔を覗き込んだ。
きっと否定するだろうけど。

「そうだ」

素直に答えた梶井さんは大人の顔をしてなくて、参ったなと困った顔をしていた。

「焦った」

その顔を見ていたら、梶井さんの唇に自分の唇を重ねていた。

「私が好きなのは梶井さんだけなのに」

「ああ。そうみたいだな」

梶井さんは笑って私にキスをした。
私より上手な深くて、甘いキスを。
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