私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
June 第25話 毒で満たして【理滉】
『毒のある女だ』
『それが私と結婚できない理由?』
『愛人ならいいが、結婚するには君は美しすぎるからな』
それが母と恋人との別れだった。
酒を飲みながら、母が泣いている。
『私には理滉だけ。ねぇ、理滉は捨てないわよね?私のことを―――』
無数の白い手が俺を闇の中に引きずりこもうとする夢。
眠ると大抵、そんな夢を見てきたが―――
「ぐっ!」
ガツッと俺の体の上に重い腕がのせられ、目が覚めた。
「こ、こいつ、マジで寝相悪すぎる」
望未は平和な顔でスヤァっと眠っていた。
俺にしては珍しく深く眠っていたみたいだ。
今の今まで。
すでに昼過ぎ。
夕方の飛行機に乗らないといけない。
それなのになかなか出る気になれないのは自分がこのアホ面を眺めていたいと思っているせいだろう。
よりにもよって、この気の抜けた顔かよと思いながら、唇にキスをした。
いやというほど繰り返したキスを。
飽きずに。
「おい、そろそろ起きろよ」
「う……ん」
ぼっーとした顔で俺を見た。
「今何時……」
「昼過ぎ」
「えっ!?た、大変!飛行機に放り込まなくちゃ!」
『それが私と結婚できない理由?』
『愛人ならいいが、結婚するには君は美しすぎるからな』
それが母と恋人との別れだった。
酒を飲みながら、母が泣いている。
『私には理滉だけ。ねぇ、理滉は捨てないわよね?私のことを―――』
無数の白い手が俺を闇の中に引きずりこもうとする夢。
眠ると大抵、そんな夢を見てきたが―――
「ぐっ!」
ガツッと俺の体の上に重い腕がのせられ、目が覚めた。
「こ、こいつ、マジで寝相悪すぎる」
望未は平和な顔でスヤァっと眠っていた。
俺にしては珍しく深く眠っていたみたいだ。
今の今まで。
すでに昼過ぎ。
夕方の飛行機に乗らないといけない。
それなのになかなか出る気になれないのは自分がこのアホ面を眺めていたいと思っているせいだろう。
よりにもよって、この気の抜けた顔かよと思いながら、唇にキスをした。
いやというほど繰り返したキスを。
飽きずに。
「おい、そろそろ起きろよ」
「う……ん」
ぼっーとした顔で俺を見た。
「今何時……」
「昼過ぎ」
「えっ!?た、大変!飛行機に放り込まなくちゃ!」