私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
「お前は俺にとって特別な存在だ」

「えっ!?そ、そう?」

望未は嬉しそうに笑った。

「変人っていう意味でな」

「あんまり嬉しくない、それは」

テーブルにあったピアノ用の楽譜を手にした。

「これ、死ぬ気で練習しておけ」

「うん」

望未はどうしてとは言わない。
一緒に弾きたいと思っていたのは俺と同じ気持ちだったのかもしれない。
ぽんぽんっと望未の頭を叩いた。

「俺がいなくても泣かずにいろよ」

「もう平気」

「そうか。それじゃ、これはいらないか」

「えっ!?なにくれるの?」

「ここの部屋の鍵。好きな時に入っていいぞ。防音設備あるからな。ピアノは後で届けさせる」

「ピアノ!?た、高いからだめだよ!家にあるし、それにカフェにだってある」

「俺が好きな時にお前の演奏を聴けない。俺とずっと一緒にいるんだろ?」

ほら、と目の前に鍵を落とすと両手で受け取った。
望未が鍵を見て、泣きそうな顔でうなずいた。

「うん。ずっと一緒にいるんだもんね」

「そうだ」

「頑張って練習する」

「死ぬ気でだ」

「厳しいよ」

恨めしい目で俺を見たが、当たり前だ。
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