私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
「梶井さんとやっと恋人になれたの」

「そうなの?恋人じゃなくても、私に相談してほしかったわ」

目の前で突然泣かれたあげく、パンケーキ屋さんから飛び出して言ったのだから、菜湖ちゃんがそう言うのも無理はない。
あの後、菜湖ちゃんは一人残され、私のスマホは繋がらず、達貴(たつき)さんに連絡してやっと状況が飲み込めたらしい。
帰ってから、かなりお説教されてしまった。

「恋人になってからじゃないと言えなかったの。梶井さんは大人の男の人だし、私のことなんて子ども扱いで相手にしてくれなかったから」

菜湖ちゃんは笑うかなって思ったけど、笑わなかった。

「望未ちゃんは強いね」

「そんなことないよ。梶井さんは本当は優しい人だってわかってたから、頑張れたの」

私の隣に立って菜湖ちゃんも同じように窓の外を眺めた。

「望未ちゃん。これって運命かもね」

「うん」

私と菜湖ちゃんだけが知っている特別な秘密。

「梶井さんとあの日、すれ違ったのも偶然じゃないのかもしれないね」

菜湖ちゃんは私の部屋にあったスノードームを揺らした。
白い雪がかかる街並みとクリスマスツリーのスノードーム。
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