私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
「恋人っていうより、年頃の娘を持った父親みたいなんですよ」

むしろ、私のお父さんより口うるさい。
私達、恋人なんだよね!?って疑いたくなる。

「うん、まあ、それはね。わかる気がするよ。望未ちゃんは危なっかしいところがあるから」

「え?そうですか?」

穂風さんはそうそうとうなずきながら、オープンの札をかけた。
それと同時に綺麗な女の人が入ってきた。
見覚えがある。
たしか―――

「こんにちは。私のこと、覚えているのね」

「あ……はい」

つい、じっと見てしまった。
ばっさりと髪を短く切っていたけど、白いうなじに胸元が大きくあいたカッソー、口元のほくろと赤い口紅ですぐにわかった。

「席にご案内しますね」

「ええ。でも、前と違う席にして。ジュースをかぶりたくないから」

「は、はい」

向こうも私のことをしっかり覚えていた。
あんな失敗をしたんだから、当たり前だけど。
席に案内すると、メニューを渡した。

「注文するから待っていて」

「はい」

「パスタのセットとホットコーヒー」

「かしこまりました」

メニューを受け取り、立ち去ろうとするとグイっとエプロンをつかまれた。
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