私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
番号を確認し、ホールに入った。
「え?特別……?」
二階席とか中央ではなく、一番前。
席としてはあまりよくない。
梶井さんの姿だけを見ているなら一番前が特別ってこと?
腑に落ちないまま、席に座った。
パンフレットの梶井さんは燕尾服姿で前髪をあげている。
その上、どこか挑発的。
モデルよりかっこいい。
「これは永久保存版」
にやにやしてそのパンフレットを眺めていると開演の時間になった。
ざわざわしていた会場は一瞬で静まり返った。
ゆっくりと幕があがり、全員が最初の音を待つ。
この瞬間がたまらない。
オーケストラがいても梶井さんの姿はすぐに見つけることができる。
圧倒的な存在感とその音―――ピアノの音から始まり、滑らかなチェロの音色が会場に響き渡った。
曲はサンサーンスの白鳥。
この曲は梶井さんにとって特別な曲だった。
白鳥を聴いてすぐに音色が違うことに気づいた。
梶井さんのサンサーンスの白鳥は以前とは違う。
今までの切なく、重たい悲しみは感じられなかった。
静かな湖面、夜の闇の中で聴きたくなるような穏やかな音。
それは傷ついた白鳥の傷を癒すような響きだった。
「え?特別……?」
二階席とか中央ではなく、一番前。
席としてはあまりよくない。
梶井さんの姿だけを見ているなら一番前が特別ってこと?
腑に落ちないまま、席に座った。
パンフレットの梶井さんは燕尾服姿で前髪をあげている。
その上、どこか挑発的。
モデルよりかっこいい。
「これは永久保存版」
にやにやしてそのパンフレットを眺めていると開演の時間になった。
ざわざわしていた会場は一瞬で静まり返った。
ゆっくりと幕があがり、全員が最初の音を待つ。
この瞬間がたまらない。
オーケストラがいても梶井さんの姿はすぐに見つけることができる。
圧倒的な存在感とその音―――ピアノの音から始まり、滑らかなチェロの音色が会場に響き渡った。
曲はサンサーンスの白鳥。
この曲は梶井さんにとって特別な曲だった。
白鳥を聴いてすぐに音色が違うことに気づいた。
梶井さんのサンサーンスの白鳥は以前とは違う。
今までの切なく、重たい悲しみは感じられなかった。
静かな湖面、夜の闇の中で聴きたくなるような穏やかな音。
それは傷ついた白鳥の傷を癒すような響きだった。