私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
「ちょっと気分が乗っちゃって。速すぎた?でもまあ、火祭りだし。あれくらい勢いあったほうがいいよね!」

「ふざけんな!早い上に激しすぎて、全員焼き殺す勢いかと思ったぞ」

「そんな酷かった!?」

梶井さんはぽすっと私の頭を叩いた。
また子ども扱い。

「次回までに俺が練習をみてやるよ」

「えっ……わ、わぁー……嬉しいなぁ……」

すごく厳しそうで素直に喜べなかった。

「まだ演奏は残っているからな。ここで聴いてろよ」

「うん」

私の演奏はまだまだ未熟。
でも、梶井さんは『次回』って言ってくれた。
それにちゃんと合わせてくれた。
梶井さんはやっぱりプロだよね。
そして、世界的なチェリストになるだけある。
私のピアノに合わせることくらいなんでもなくて―――それから、私のためにみんなの前でプロポーズをしたってこともわかってる。
私が昔の女の人に会って、不安になっていたことにちゃんと梶井さんは気づいていたのだ。

「よかったわよ。火祭りの踊り」

千亜妃さんが私の隣に来て言った。

「深紅のドレス、よく似合ってる。もうお嬢ちゃんじゃないわね」

そうかもしれない。
私はもう梶井さんの隣に立っていても普通でいられる。
あの頃とは違う。
泣かずに笑っていられたから。
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