私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】

July 第32話 贖罪は必要ない

梶井さんとゆっくり昼過ぎまで眠り、私が買っておいた食料を二人で食べた。
お菓子とジュースを買いすぎだと叱られながら……
意外と梶井さんは寛容で世話好きだった。
シャワーを浴び、濡れたままだった私の髪を乾かしてくれながら、梶井さんは言った。

「お前の両親に会う前に一緒に行って欲しい場所がある」

「うん。わかったよ」

場所は聞かなかった。
梶井さんがどこに行くのか、なんとなくわかったから。
部屋に飾ってあった母親の写真はもうなく―――からっぽな写真立てだけが置いてあったから。
車を走らせ、途中、花屋で花を買い、郊外まで出た。
着いたのは木々に囲まれた霊園だった。
ひんやりした空気の中、木々が濃い影を作る。
その影の下を選んで、梶井さんは私と手をつないで歩いた。
静かな中に蝉の声が鳴いている。
まだお盆には早く、誰もいなかった。
誰のお墓なのとは私は聞かず、黙って梶井さんについていった。
梶井さんも何も言わない。
ただ無言で二人で花を飾り、墓の前で手を合わせて目を開けた。

「毎年、命日だけは来ていた」

やっと梶井さんが口を開いた。
霊園に近づくほど口数が少なくなった梶井さん。
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