私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
「梶井さんみたいなイケメンと離れて暮らしてたら不安よね」

いってらっしゃいと二人は言ってくれた。
梶井さんはホッとしたように息を吐いた。
緊張した顔なんて舞台でも見たことなかったのに。
緊張で強ばった顔をした梶井さんを初めて見た。

「堅苦しいのはこれでおしまいだ!」

「そうよ、飲むわよー!」

まるで今までおとなしくしていたかのような口ぶり。
え?今のは冗談ですよね?
二人は大騒ぎして、夜遅くまで盛り上がった。
夜中近くまで続き、梶井さんは明日の午後にドイツにたつことを告げて、やっとおひらきになった。

「ごめんね、梶井さん。私の家族が大騒ぎしちゃって。呆れたでしょ」

「いや。賑やかで楽しかった。ああいうの俺には無縁のものだったからな」

その言葉に梶井さんの孤独を感じた。
きっと一人でいることが多かったんだなというのがわかった。
私の両親は忙しかったけど、菜湖ちゃんがいてくれたし、イベントはあんなふうに盛り上げてくれた。
だから、梶井さんほど孤独ではなかった。

「私の両親、結婚したら梶井さんの両親にもなるんだよ」

「そうだったな。悪くない」
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