私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
なぜか梶井さんはちょっと身を引いていた。
小百里さんのことが苦手なのかな。
あんな優しくて可愛いのに。
屋台の前を通るとソーセージがジュッ―と焼ける音といい匂いがしたけど、我慢した。
だって、私が行きたい場所まであと少し。

「梶井さん、ツリーを見ようよ」

「わかった……って、そろそろ梶井さんはやめろ。お前も梶井なんだからな」

「そ、そうだったね!」

「名前で呼べよ。奥さん」

「急には無理!恥ずかしいよ」

しかも、奥さん呼び。
梶井さんが残念そうな顔をしたのがおかしくて笑ってしまった。
時々、梶井さんは私といると子供っぽくなる。
気づいてる?
だから、特別だよ―――梶井さんのコートをひっぱって、身をかがめさせると内緒話をするようにその耳にささやいた。

理滉(みちひろ)

ふっと梶井さんが嬉しそうに笑う。

「堂々と呼べよ。お前は本当におかしい奴だな」

幸せそうに笑う梶井さんを見あげて私も微笑む。
いつも笑っていて。
私はあなたを孤独(ひとり)にはさせないから。
私達の前にはクリスマスツリーがあった。
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