私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
雑誌で特別で大切な人だって言っていたのを思い出していた。

「おい、なんて顔してるんだよ。俺がいじめたみたいだろ」

こほんと渡瀬さんが咳払いをした。

「仕事は終わりました。店を出ましょう」

この言葉に私はホッとした。
今、私の顔を見られたくなかった。
きっと泣きそうな顔をしていたから。
今、泣きたくない。
おこぼれのキスをされたくない。
特に今は。
そう思っていると、店のドアが開いた。

理滉(みちひろ)、迎えにきたわよ」

千亜妃(ちあき)さん」

「次は私と付き合ってもらうわよ」

「俺が逃げられないように迎えに来たってわけか。わざわざどうも」

「そうよ。すぐにあなたは逃げるから」

現れたのはコンサートの日、車を運転していた美女だった。
スタイル抜群でハイヒールも短いスカートも似合っている。
今日も女王様みたいな態度だった。

「打ち合わせが長引いて遅れました。すみません」

渡瀬さんが謝ると千亜妃さんは渡瀬さんじゃなく、私のほうを見てくすりと笑った。

「いいのよ。どうせ悪いのは理滉(みちひろ)なんだから」

「俺のせいかよ」
< 73 / 174 >

この作品をシェア

pagetop