ニガテな副担任はこの頃距離が近すぎる
 仕事で疲れていても生活しなくちゃいけない。ここをおろそかにするとずるずるとだらしない生活をしてしまいそうだ。

  頑張るためにちょっといい入浴剤も買おう。そう心に決めて電車を降りた。

 駅前から自宅方向に向かって歩く。途中にあるドラッグストアであれこれ買って店を出た。

 買いすぎちゃった……重い。

 結局あれもこれもと買ってしまって、エコバッグはパンパンだ。

 腕時計を確認したら、もうすぐ二十二時だ。一刻も早く帰宅して、買ったばかりの入浴剤で心も体もリラックスしたい。

 そんなことを思いながら自宅に足を向けた途端、目の前に見慣れた制服が目に入った。

「……林さん?」

 向こうはこちらに気が付いていないけれど、間違いない。明るいコンビニの店先に立っていて顔がしっかりと確認できた。

 先ほど見た調査票に書いてあった自宅とは反対の駅だ。しかもまもなく二十二時。たったひとり、こんなところでなにをしているのだろうか。

「林さん」

 私が声をかけると、彼女は足元から顔を上げた。

「小鳥遊先生……」

「やっぱりそうだ。こんなところでなにしてるの?」

「……あの、塾で自習していたので」

 なるほど、たしかこのあたりに大手の予備校がある。

「もう遅いし帰ろう? 駅まで一緒に行こう」

「はい……」

 私の声掛けには素直に従った。いろいろ話しかけようかと思うけれど、この年頃の子は詮索されるのを嫌う傾向にある。本当に他愛のない話をするにとどめた。

「遅くまで勉強頑張ってるんだね」

「……はい」

 返事があるだけまだましだ。なんとか駅まで会話しつつ到着した。
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