ニガテな副担任はこの頃距離が近すぎる
「おうちの人は遅くなるの知っているんだよね? 塾だって」

「家には連絡しないでくださいっ!」

 林さんが突然大きな声を出したので、たじろいだ。

「え……あ、うん。でも――」

「先生には関係ないので、口出さないでください」

 大人しい印象の林さんからの、予期せぬ強い言葉だ。

「わかった。保護者の方がご存じならいいの」

 私は取り繕うように笑うしかできない。これ以上刺激するべきではない。

 本人もばつが悪そうにしている。その様子から咄嗟に出た言葉のようだ。

 駅に到着した。私は会話を切り上げて、彼女を改札に向かわせる。

「じゃあ、気をつけてね。また明日学校で」

「はい。さようなら」

 改札を抜けて自宅方面のホームの階段をのぼるまで見送った。

 なんだか様子が不安定だった。心配だけれど、これ以上は踏み込めない。こんなときに自分の無力さを痛感する。

『先生には関係ない』か……。そう言われてしまうと、踏み込めなくなってしまう。担任になって間もない。信頼関係ができていないといえばそれまでだけれど。なんだか自分に言い訳しているようでもやもやする。

 平野先生は仲がいいと言っていたけれど、だからといって信頼されているわけではない。

 生徒とのかかわりは、なにが正解でなにが間違いなのか、後になってみないとわからない。教師としてやってきて三年経った今でもだ。

 日々反省することばかりだ。生徒の成長を促しているのに、ここのところ自分は全く成長できていないように思う。

 とぼとぼと自宅に向かって歩く。ため息をついて見あげた空は星ひとつなかった。

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