ニガテな副担任はこの頃距離が近すぎる
 お礼を言わないと。きょろきょろと見まわしても職員室にはいない。私は他の仕事をしつつ八神先生を待ったが、結局彼がやってきたのはホームルーム間際の時間だった。

「八神先生、どこにいっていたんですか?」

「え、生徒とバスケしてました。いや~久しぶりだったからあんまり動けなくて」

 そういえば昨日生徒と約束していた。さっそく今朝の約束を果たしたわけだ。

「ちょっと着替えてくるんで、ホームルーム先に行っていてください」

「あ、はい」

 颯爽と更衣室に消えていった。その背中を見送っていてはっと気がつく。お礼を言い忘れた。会ったらすぐに言おうと思っていたのに。

「あ、ホームルーム」

 私までギリギリに向かうわけにいかない。今日は朝の時間を使って漢字テストをする予定だ。ゆっくりしていられない。

 あわただしい一日が今日も始まった。



 教室に入って一番に確認したのは、林さんの様子だ。いつもと同じ様子で問題なさそうでほっとする。

「先生、今日の漢字テストなしにしよ。俺バスケでくたくた」

 クラスのムードメーカーの石橋くんが、挨拶をする前に声をあげた。

「しません、朝からそんなに疲れていて、今日の授業平気?」

「無理」

 即答する石橋くんの言葉に周囲がくすくすと笑う。

「あ。そうだ石橋くんは進路希望調査書未提出だから、急いで出してね。では、ホームルームはじめます」

 私がそう口にしたのと同時に、教室の後ろのドアから八神先生がそっと入って来た。連絡事項を伝えて予定通りに漢字テストを行う。
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