ニガテな副担任はこの頃距離が近すぎる
 なんだかんだ言っていた石橋くんは、満点を取っている。

進学校の中でも医学部や旧帝大を目指すクラスだ。見回りしているとみんなしっかりと勉強してきたようでよくできている。

 しかしそのなかでひとり、ペンをもったまま動かない生徒がいた。林さんだ。

 彼女の成績ならこのくらいの漢字が書けないなんておかしい。少なくとも全くわからないということはないはすだ。

「林さん、どうかした?」

 小さな声で確認したが、彼女は首を左右にふるだけだ。もうシャープペンシルすら持っていない。

 できないのではなく、やらないのだ。私はこれ以上声をかけるのはやめて、教壇に戻る。

「点数が半分以下の人は、放課後残って今回の復習と、次回の予習をしてもらいます」

「え~」

「いつも言ってるでしょう? いやならしっかり勉強しましょう。じゃあ回収」

 後ろの席からプリントを回して回収する。一時間目が始まる前に採点して放課後までに返却予定だ。

 ちらっと林さんの様子をみたら、仲のいい子と笑顔で話をしていた。少しほっとして教室をでて職員室に向かった。

「小鳥遊先生」

 隣に並んだのは八神先生だ。

「昨日受けたデータ入力、ほとんどやってもらってありがとうございます。今朝見てびっくりしました」

「あぁ、あのくらいならついでです。それにふたりで受けた仕事だからわざわざお礼を言わなくても。義理堅いですね、郁ちゃんは」

「郁ちゃんって……」

 呆れて隣を歩く彼を不満いっぱいの顔で見る。

「生徒が呼んでるから、俺も便乗しました。ダメでしたか?」

「ダメっていうか、親しき仲にも礼儀ありって言うじゃないですか」
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