ニガテな副担任はこの頃距離が近すぎる
「さすが国語の先生。俺のことを親しい仲だって言ってくれてうれしいな」

 ニコニコとなぜだかとてもうれしそうだ。

 私は予想外の反応に、またしてもどきまぎしているというのに。

「な……っ、なに言って」

「違うんですか? 言ったのそっちなのに」

「それはそうですけど!」

 ああいえばこういうとはまさにこのことだ。言い返したいのに、とっさの言葉が出てこない。国語教師なのに情けない。

「とにかく、大変助かりました。ありがとうございます」

 しっかりと頭をさげ、もう一度お礼を言う。

「そんなにありがたいと思っているなら、今度一緒にバスケしませんか?」

「……しません」

 なぜ急にそんな話になるのだろう。

「かっこいい姿見せたかったのに」

 八神先生はシュートする真似をしてみせる。まるで生徒と話をしているような気持ちになる。

「郁ちゃん、もしかして運動苦手ですか?」

「そ、そんなことないですよ。全然、まったく。それと郁ちゃんって呼ばないでください」

 なんとなく弱みをみせたくなくて、虚勢を張る。本当は死ぬほど苦手だ。比較的学校の成績はいいほうだったが、体育だけはからっきしだった。

 そのとき正面から、学年主任がやってきて八神先生に声をかけた。

「八神先生、ちょっと手伝ってもらっていいですか?」

「はい、喜んで」

 まるで居酒屋のスタッフのような返事をしながら、踵を返して歩いて行った。

 私はこれ以上追及されないことにほっとして、先に職員室に向かった。

 しかし八神先生の人気には驚く。生徒だけでなく先生からも信頼されていて……うらやましいな。

 自分が不器用だという自覚はある。人と比較しても仕方がないといつも生徒には言っているのに。

 そんなことを思いながら、授業に向かった。

< 15 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop