ニガテな副担任はこの頃距離が近すぎる
 私よりもよほど色気のある生徒たちに挨拶をしながら、うらやましいと思う。

 そっと顔を上げると、最後まで残っていた桜の花びらが風に舞うのが目に入った。

 私が勤めるのはここ【学校法人 天宮司(てんぐうじ)学園 瑞翔(ずいしょう)中学・高等学校】だ。現在は高校一年生の担任をしていて教科担当は国語、日々忙しく過ごしている。

 中高一貫校で高校への外部からの入学はほとんどなく、高校一年の四月だがクラスメイトは顔見知りで和気あいあいとしている。

 年相応にやんちゃではあるが、みんな素直でいい子だ。

 去年も彼らの授業を受け持っていたので、全員の顔と名前は一致している。とはいえ、やはり担任となると色々と大変だけれど。それも初めての担任で戸惑うことも多い。

 だが平野先生や他の先生の助けを借りてなんとかやっている。

 ひとつ抱えた大きな問題以外は。

「そろそろ時間だね」

 腕時計を見ながら平野先生が校門に手をかける。

「そろそろ閉めるよ~急いで」

 まだ正門までたどり着いていない生徒が、門が閉まりそうになっているのに気がついて走り出した。

「やだ~前髪がめちゃくちゃになっちゃう」

「次、遅刻したら親呼出しなんだよ! やばっ」

 それぞれ焦った様子で駆け込んでくる。

「明日からはもう少し早く家を出てね」

 声掛けをしながら、予鈴から五分が過ぎたところで門を閉める。

「ちょと、待って!」

 声が聞こえて振り向くと、スーツ姿の男性が慌てて駆け込んできた。

「セーフ」

「アウトですよ、こんなギリギリに来るなんて」

 思わず眉間に皺が寄ってしまった。

「すみません、危なかった~」
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