ニガテな副担任はこの頃距離が近すぎる
 学校法人天宮司学園理事長、天宮司園絵(てんぐうじそのえ)。

 昨年、前理事長の死去に伴い理事長に就任。それまでも学園の運営に関わっていたのでさほど混乱は生じなかった。

 一言でいえば女傑。威厳のあるたたずまいや、頭の回転の速さ。学園を引っ張っていく統率力。安心してついていけるそう思える人だ。

 自分にも厳しいぶん、私たち教職員にも要求が厳しい。正直これから行われる学園の改革についていくのに必死だ。

 緊張感を持ち。頭をフル回転させて会議にのぞむ。



「どうして……こんなことに」

 目の前にある紙の束に絶望しそうになる。時計の針はまもなく二十時を指そうとしている。会議はとっくに終わって職員室にいるのは私と数名の教師だけだ。

 まだ明日返却予定の小テストの丸つけと記録ができていない。終わらなければ明日の朝早く来てしあげるしかない。

 そのうえ保護者に配る昨年度の進学実績をまとめる担当が私と八神先生になった。

 八神先生が立候補したので、教育係である私も連鎖的に請け負うことになったのだ。進路相談担当の先生に確認をしてもらわないといけないので、明日の放課後までにデータ入力をしなくてはいけない。

 そ・れ・な・の・に!

 肝心の八神先生はすでに帰宅していない。本人曰く『俺、朝のほうが仕事はかどるんで、明日の朝からやります』と言って颯爽と帰ってしまった。今日時間ぎりぎりに校門に駆け込んで来たのはいったいどこのどいつだ。

 会議の前に一瞬でも八神先生を見直したことを後悔する。

 だめだめ、愚痴っぽくなってる。集中しよう。
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