アルトの夏休み【アルトレコード】
アルトに夏休みをあげたい、と相談メールをしたところ、午後になって北斗さんから通信が入った。
廊下を歩いていた私は通信端末を取り出し、応答する。挨拶を交わしたのち、北斗さんは本題に入った。
『アルトの夏休みのことだけど。そういう体験も良いことだと思うから、今度の職員の夏季休暇をアルトの夏休みにしよう』
ということは、私は休日出勤しないといけないのか……。それなら事前にひとことほしかったな。
「ありがとうございます。では、休日出勤届を提出します」
『なに言ってるの。君もきちんと休みをとって』
「え? ですけど、そうなるとアルトの世話は……」
『俺がいるから大丈夫』
「ですけど、北斗さんもお休みのはずじゃ……」
『俺は研究所に住んでるようなもんだし、特に行きたい場所もないから大丈夫。君は実家が遠いんだろ? 久しぶりに帰って顔を見せてあげたら』
「……ありがとうございます」
北斗さんも実家に帰りたいのでは、と思ったけど、それは立ち入ったことのように思えて言えなかった。そういえば、北斗さんから家族とか友達とか、プライベートなことを聞いた覚えがない。
研究室に戻った私はアルトに6日間の夏休みが決まったことを伝える。
「やったあ!」
アルトは両手を挙げ、跳ねまわって喜ぶ。