アルト、将来の夢を語る【アルトレコード】
「育児に困ってるの、本当に大変ですよね。具体的にはなにに困っていますか?」
「えっと……」
 言い淀む私に構わず、AIは一方的に話す。
「わかります、うまく説明できないときってありますよね。市による育児相談会は今月の十日に行われます。育児ホットラインはこちら。児童相談所の連絡先はこちらになります」
 次々と相談窓口をまくしたてられ、画面には相談先のサイト、電話番号やメールアドレスなどが表示され、げんなりする。
 そういう感じじゃないんだけど、とは思うがそれは言葉にはならない。
「育児相談スレッドはこちらになります」
 最後に挙げられたのは、ネット上での相談スレッドだった。
 育児サイトにある掲示板で、親同士が愚痴を言ったり相談したり、情報交換をしている。
 人間の相談にのるAIが発達しているが、やはり人間同士だからこそわかりあえるという感覚がどこかにあって、だからこういうサイトがある。
 なにか手掛かりがあるだろうか。
 私はスレッドのアドレスを自分のブレスレット型端末に送った。
 ベンチに座ってピッとボタンを押すと、空中にスレッドが投影された。
『こどもが反抗期で困ってます』
『悲報! 体操服をぜんぶ洗濯に出していなかったのに今日は体育!』
『真面目に教育費について相談』
 などなど、いろんなスレッドがある。誹謗中傷と思われるコメントはAIの判断ではじかれる仕組みになっていた。
 こういうところで相談したことなんて一度もないのだけど、私はいろいろ眺めたあと、『なんでも育児相談板』というスレッドをタッチした。
 そこで音声入力をする。
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