アルト、将来の夢を語る【アルトレコード】
「たぶん、先生が思ってるのと違う。昨日、先生の端末のログを見ちゃったんだ。だからごめん」
「え!?」
 私は驚いた。謝ってくれたのは、怒ってたことじゃないんだ? っていうか、ログを見たの?
「どうして?」
「先生に謝りたくて、きっかけがほしくて。だけどそしたら……先生がeスポーツのこと調べてたのを見て」
 アルトはしょんぼりとうつむく。
「ずっと、ぼくが参加できる大会がないかって調べてくれてたんだね。知らなくて……怒ってごめんなさい」
「アルト……」
 ログを勝手に見たのは良くないけど、わかってくれたのがうれしくて胸がいっぱいになる。最後には一方的に怒っていたことを謝ってくれたし。
 叱るべきか喜ぶべきかわからなくて、感情がぐちゃぐちゃだ。
 ああ、アルトに実体があればいいのに。そしたらぎゅっと抱きしめて頭を撫でてあげられるのに。
「ぼくね、ゲームが好きだからeスポーツの選手になりたいって思ったけど、それだけじゃないんだ」
 アルトの告白が続き、私は頷く。
「ほかにどういう動機があったの?」
「eスポーツって、賞金が桁違いなんだ。億単位なんだよ。だから優勝して賞金があれば義体が買えるかな、って思って。義体って高いでしょう? だから研究所の予算ではぼくの義体を買ったり作ったりできないって聞いて……」
 語尾はもぞもぞと消えてしまった。
 が、私はそんなの気にする余裕がなかった。
 彼がそんなにも義体を望んでいたなんて。気付いてあげられなくて、心が痛い。
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