アルト、将来の夢を語る【アルトレコード】
「傷付くアルトを見るのは怖いかい?」
「はい……」
 私はうなだれる。
「だけど、同時にそれは君が傷付く場面でもあるね。育てるというのは、時としてお互いに傷付け合うことでもある……苦しいね」
「はい……」
 世の中のお母さんやお父さんも同じように苦しんでいるのだろうか。私のお母さんたちもまたこうして悩み、苦しんできたのだろうか。だとしたらどれほどの苦しみを超えて育ててくれたんだろう。そんなことが頭に浮かび、思いがけずしんみりしてしまう。
「だけどね」
 そう言った北斗さんを見ると、慈愛に満ちた笑みが浮かんでいた。
「よく言われる例えだけど。(ぎょく)は磨かれるからこそ美しく輝く……君もアルトもきっと美しく輝けると思うよ。だからがんばってね、先生」
「……はい!」
 私は頷いた。
 アルトと私。お互いの成長のためにも、この事実をきちんと伝えなくては、と心に決めた。

 研究室から戻ると、アルトは慌てたようになにかを隠した。
「アルト……なにを隠したの?」
「……なんでもない」
「なんでもなくはないよね?」
 じーっと見るとアルトは気まずそうに目をそらす。
 と、そのポケットがやけにふくらんでいた。
「ポケットに入ってるのはなに?」
「……なにもないよ」
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